◆◇ 打ち込めない職人修行時代 ◇◆
父の塗装店は工務店やリフォーム店の下請け業者でした。
外壁の塗り替えは月に一度程度。
後は、細々したリフォーム工事が中心です。
さて、そうして職人デビューを果たした私は、毎日修行の日々を送ります。
もちろん、黙々と真面目に仕事はしていましたが、夢中になって打ち込んでいたかというと、決してそうは言えません。
子供も出来て、毎日充実した日々を送っていました。しかし、今思うと「チャレンジ精神」を失っていた時代でした。
職人を始めてからは、自分の意見が通らない父の下で働く事が当たり前になり、仕事以外の事で自分の充実感を補って、自分をごまかしていたのかもしれません。
◆◇ 仕事以外で補っていた事… ◇◆
仕事以外の出来事の中で自分が「対人販売」が好きである事に気が付いていきます。
(母方の実家が、梅ヶ丘でそば屋をしているので、商売人の血が、私にも流れているのかも知れません)
まずは、学生時代にサークルでマンガの同人誌を作って売り子をしている時。
それから、家庭の不用品を公園で売り買いするフリーマーケット。
さらに、子供のボーイスカウトの親の会で神社のお祭りなどで屋台販売をしていた時。
インターネットのオークションで400個も売っていた時。
それぞれの準備やお客さんとの対話、喜んで買ってもらった時の喜び…もちろん収益を上げる喜びに(その日の打ち上げで使い切ってしまう額でも)充実感を得ていました。
◆◇ 自分が手抜き業者!? ◇◆
ところが、思わぬ事から、「自分で独立してやってみよう!」という思いが芽生え、遂に独立する決心をしました。
他でも触れていますが、当時(平成16年頃)は訪問販売リフォームが全盛で、父親の塗装店もその頃から仕事量がガクンと減っていた時期でした。
そんなある日、材料関連の事は父親任せだった私と材料屋さんとで話す機会がありました。
私 :「この塗料は1斗缶で何㎡くらい塗れる物なんですか?」
材料屋さん:「この塗料は、外壁の【上塗り材】じゃ無いですよ」
私 :「えっ!?」
材料屋さん:「これは、塗りながら模様を作っていく【単層弾性塗料】だから、【上塗り材】のように薄めて塗っちゃダメだよ」
私 :「………。」
そうなのです。
私たちは、この塗料を希釈する時に、規定量の数倍の水を入れて塗っていたのです。
そうです、私自身が手抜き工事をしていたのです。
ずーっと、自分達は丁寧な仕事をしている自負がありました。
仕事仲間にも、工務店からも監督からも、信頼が厚く、お客様からも信頼されていました。
ところが…そんな自分達が「手抜き業者!?」
信じられませんでした。
◆◇ きっかけ ◇◆
もちろん、「どういう事?」と父に聞きましたが、聞く耳を持ってくれません。
「これでいいんだ」の一点張りです。
一番は在庫の問題、そして予算との兼ね合いです。
また「この塗り方でも、昔の塗料から考えると決して性能が悪い訳では無いんだ」と言う理屈なのです。
確かに私にも「オウム事件の異臭騒ぎで使えなくなった臭い吹き付け塗料」より、その後で使い始めた「水増ししていた塗料」の方が性能が良いように思えました。
父が言うように、塗った直後はその塗料でも十分キレイに見えるのです。
そして、その塗料を使い始めなければならない理由にも十分納得できるものがありました。
ただ…、正規の使い方があるのに、亜流の使い方で良いのか?
この塗装方法で胸を張って、良い仕事をしていると言って行けるのか?
結局、この事はきっかけに過ぎないのかも知れません。
20年間【仕事】にチャレンジ精神を向けなかった私がいけなかったのです。
「熱中する対象」をついに【仕事】に向け、自分自身の道を切り開いて生きて行くのには、父と一緒に仕事をするのは無理でした。
(お互い「自分が一番でなければ気が済まない」タイプはそっくりなのです…。
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